あなたは大丈夫? コミュニケーションの落とし穴
(ITmedia Biz.ID - 05月07日 15:31)
“愛され”新人を育むビジネスマナー:社会人にとって円滑な「コミュニケーション」は、仕事の成否にかかわる基本的な要素である。またそれは、人間関係を
作る手段でもあるため、「マナー」が伴わなければならない。しかし、それらをきちんと身に付けるには、それなりの訓練が必要なのだ――。
あなたは、日頃の自分の言動が、相手からどう見られているのかを考えてみたことがあるだろうか? ビジネスシーンにおいては、自分では全く意識していないにもかかわらず、相手に不快感を与えてしまっていたなどということはよくある話。
●あなたの言動は、相手にどう見られているのか?
ここからは、日頃の自分の言動を客観的に振り替えるきっかけとして、コミュニケーションで陥りがちな「落とし穴」をそのケースごとにご紹介しよう。
●社会人の第一歩は謙虚であること
・落とし穴1
学生時代のバイト経験から、電話の対応は慣れたもの、と思い込んでいると、かえってちゃんとした電話応対を学ぶ機会を逃したり、勘違いしたまま覚えてしまう危険がある。
「謙」とはへりくだること、「虚」とは自分を“虚しく”し、消し去ること。多少乱暴な言い方だが、特に最初のうちは職場環境の中に自分を持ち込むのではなく、自分が環境に溶け込むようなイメージで職場の人と付き合いたい。
例えば、教えられたことを自分の浅い経験に照らして判断し、理解した気になるのはとても危険だ。特に社名は、初めて耳にしたときにはきちんと聞
き取れないことも多い。自信満々で電話を取ったものの「○○商事です。……(相手が名乗る)……はぁ?」などとなってしまわないよう、一から覚え直す気持
ちで取り組もう。
・落とし穴2
いくつかのチーム毎にデスクが固まって「島」を作っているオフィスも多いが、人が出払っている隣の島で電話が鳴っても無視してしまっていないだ
ろうか。他チームにかかってきた電話では、受けたところでどうせ何も分からないし、かえって失敗して迷惑をかけてしまうかも……という心配はもちろんある
だろう。しかし電話に出る人間が自分しかいないのなら、自分が会社を代表して電話に応対しなければならない。
●責任感の強さが社会人としての質を決める
・落とし穴3
指示・命令が重なった場合には、優先順位を絶対に自分で判断してはいけない。たとえば先輩から、夕方の会議に間に合うよう、資料をまとめておくように言われた。しかし、そのあとで課長から別の仕事を命じられたとする。
先輩の上司の命令ではあるが、タイムリミットのある会議資料をあと回しにすれば間に合わないのは明らか。それは課長の責任ではなく、課長に理由を話さなかった自分の責任だ。この場合は、あとから命じた課長にわけを話して、改めて指示を仰がなければならない。
・落とし穴4
訪問や納期など、時間に関する約束ごとは多いが、不測の事態が発生しやすいのも時間の約束。たとえば、タクシーが渋滞にはまってしまい、約束の
時間に遅れてしまったとき、「道が混んでいたので約束に遅れました」といういい訳は、基本的に通用しない。いくら努力しても、約束を守れないことは往々に
してある。しかし、ビジネスの関係では、その「努力」というプロセスよりも、約束を守れたかどうかという結果が重視される。何としても約束を守るという行
動の原則を、自分の中に確立しよう。
●人間にも仕事にも積極的にかかわろう
・落とし穴5
自分の指導係や、先輩・上司を嫌っていないだろうか。一生懸命やっているのに、いつもアラを見つけて指摘してくる、優しさが感じられない、話し
掛けてほしくないときにも話し掛けてくる……。しかし相手は人間関係のベテランぞろい、自分のそのような気持ちは相手に筒抜けだということを心に留めてお
こう。対面する相手は自分の鏡。相手を嫌えば自分も嫌われる。学生時代であれば、付き合いたくない人や関心のない人との関係を避けることもできたろう。し
かし、社会ではそういうわけにはいかない。人間的な好き嫌いを超えて積極的に働きかけなければ、よい人間関係は作れないのだ。
・落とし穴6
文章に自信があるから、社内誌を作る仕事をしたい。人付き合いがうまいから、営業職を。几帳面なのでデスクワークに向いている……。誰でも、自
分の向き不向きについて考えているだろう。しかし事業とは、組織、あるいはチームで動く団体競技で、与えられた仕事にそれぞれが全力を尽くすことで成り
立っている。配属先が不満でも、まずそこに集中しよう。与えられた仕事に、自分から興味を掻き立てていき、よりよい形にできるよう、努力してみよう。もし
かしたら自分に意外な才能を見出すかもしれない。
●コミュニケーションは正しいマナーで生きる
・落とし穴7
しっかりと理解していないのに、「はい!」と、いい返事をしてしまう。分からな分からな聞き返し、「呑み込みの悪いやつ」と思われることが怖
い……。しかし、「はい」は理解したとの意思表示。よく分かっていないのにそんな返事をしてしまのは危険だ。相手の指示や命令、話を聞くときは、100%
理解するまで食い下がろう。何度も聞き返す方が、最終段階になって勘違いに気付くより、ずっといい。
・落とし穴8
新入社員のうちは、先輩や上司が何を考えているのか理解できないことが多いのは当たり前。付き合って日が浅いのだから当然だ。一方の先輩や上司
は、自分の仕事をしながら新入社員の一挙手一投足を指示することは難しいのも事実。いくら、マナーを守っているからといって「相手の立場に立つ」ことを忘
れてしまっては本末転倒だ。早く仕事を覚えたい、みんなの仲間に入りたい、と思うなら、先輩や上司からのアプローチを期待するだけでなく、あなた自身から
のアクションも大切なポイントとなる。そうすることで、先輩、上司はそのやる気を認め、積極的にかかわってくれるようになるだろう。
●言葉遣いの「イエローカード」
ふだん何気なく口にしている言葉でも、ビジネス上ではNGとなる危険性もある。あなたの言葉遣いは大丈夫だろうか? 改めて見直してみよう。
●イエローカード1 「……したいと思います」
「がんばります」と「がんばりたいと思います」とでは、本人の決意や意思の伝わり方に大きな違いがある。なぜなら、「~したい」は、本人の願望
の表現であり、「がんばることを/したい」という、腰が引けた決意に聞こえるからだ。「ほんとうにやる気があるのか?」と言われても仕方がない。
願望には逃げ道がある。「~したかったけれど、ダメだった」と、いとも簡単に逃げることができるし、責任感も感じられない。一方、決意には責任
が伴う。信頼とは、自分の責任感が相手に伝わって初めて得られるものだ。「~したい」といった方が耳にソフトではあるが、実社会では、もって回った表現は
避け、自分の決意や意思はストレートに出そう。
●イエローカード2 「……のほう」
資料のほう、私が用意しておきます」などという「~のほう」は、いわれた相手を何となく不安にさせる。「~のほう」とは、大ざっぱな方角を指し
示す言葉で、「そのもの」を指すわけではないからだ。これはそもそも焦点をあいまいにする言い回しで、レストランなどで勘定をするとき、店員が勘定書きを
出して「お勘定のほう、こうなります」というときの、請求の露骨さを避ける場合に便利な表現といえる。要するに、もったいぶった表現で、ことの本質をオブ
ラートにくるんでしまうわけだ。しかし、ビジネスであいまいな表現は避けたい。「資料のほう」でも意図は伝わるだろうが、「資料は私が用意しておきます」
と明確にいったほうが、はるかに理解しやすく、信頼がおける。
●イエローカード3 「……じゃないですか」
今では老若男女を問わずよく使われ、市民権を得た表現だが、ビジネスの場では「?」と言わざるを得ない。妙に押し付けがましく、しかも馴れ馴れしく感じられるからだ。
理由は、言い回しが問い掛けであるせいだろう。問い掛けは、相手に、肯定・否定・中立の立場なり、返事を保証するもののはず。しかし、「~じゃ
ないですか」には、相手に肯定しか許さないといった不思議な圧迫感がある。言外に「違いますか?」という慇懃無礼な追い討ちがにおうからだ。たとえ自分に
はそんな意識がないにせよ、問題は受け取る側がどう捉えるかにある。ビジネスには持ち込まない方が無難だろう。
●イエローカード4 「……なんですけど」
「あのう~」とセットで使われることが多い。「あのう、そろそろ(仕事を)終わりにしたいんですけど」など。しかし、これでは「終わりにしたい」という願望を相手に伝えたことになっていない。だから返事のしようがない。
「けど」は、「私はそう思うけど……」のように、自分の考えをあいまいにして相手の反応をうかがう言葉。または、そのあとに「~けど、だめです
か?」と続く逆接表現だ。冒頭の「終わりにしたいんですけど」には、「終わるか終わらないかあなたが決めてください」さらには「最後までいわなくても分
かって」という責任逃れと甘えが感じられる。「今日はもう帰ってもよろしいでしょうか」とストレートにいった方が、よっぽど気持ちがいい。
●イエローカード5 「ワタシ的には……」
自分の考えを強引に客観化し、主体と責任をあいまいにする言葉といえる。「~的」とは、ある状態を表す言葉である。だから、意見を述べるとき
「ワタシ的には~ということです」などというと、「~と考えているのが、私の今の状態です」となる。意見を述べているのではなく、自分の状態を説明してい
るにすぎない。意見の表明ではないから反対意見もでにくく、議論にもなりにくい。何よりも、意見が客観化されてしまうために、本人が真剣に身を入れて取り
組んでいる姿勢が伝わらない。真剣に取り組んでいる人たちから一歩引いて、高みの見物を決め込んでいる印象も与えるので、エラそうでもある。ビジネスの場
では口にしない方がよい。
●イエローカード6 「……していただいていいですか」
奇妙な言い回しである。「ここにサインしていただいていいですか?」などのように、問い掛けの形はとっているももの、相手の行動をうながす場合
に使われることが多い。たいていの場合はいいも悪いもなく、そうしなければならないのである。このように、相手が拒否できない要求をしておきながら、形だ
け相手の許可を得るというのは、失礼といわざるを得ない。同じ問い掛けなら、「サインしていただけませんか」と、すっきりいうべきだ。「サインをお願いし
ます」なら、もっとストレートで分かりやすい。相手がすべきことを要求するのだから、許可を得るのではなく、お願いする気持ちを込めよう。
●マナーの原点は自分の気持ちにある
ここまで、さまざまなケースをご紹介してきた。中には自分のコミュニケーションとマナーの認識のレベルに愕然とした人もいるかもしれない。しか
し、何もマナーを恐れすぎることはない。それはマナーの原点が、相手と友好的に付き合いたい、自分の意思を相手に伝えたい……といった気持ちにあるから
だ。そんな自分の思いや誠意を表すツールとしてマナーを捉え直してみると、自然に使いこなせるようになるはずだ。
(SOS総務)
最近のコメント